ネオンホールプロデュース 演劇公演 vol.3「ヤルタ会談」キャストインタビュー チャーチル・増沢たまみ
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(Bチーム)チャーチル役・増澤たまみさん
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若:若林
た:増澤たまみさん
若 いまいち、たまさんが普段、どこまでの事に手を広げてるのか分からないんですけ
ど。
た そりゃあそうか。自分でもよくわかんないし。まあ、まちづくり会社のアドバイザーみたいなこともしたり、「予算○○円でなんかやって」とか「あそこなんとかして」みたいな形で話をふられる事も多いから、結果的にもの凄い色々な事に手を出すことになってます。ナノグラフィカの活動もかなりとらえどころがないからね。運営は共同でやっているんだけど、結構明確に分業してやってて、私は全体の統括的なことと、企画と、いいだしっぺ的な役割。まあでも、「私がやりたいことを言い出す」というよりは、「必要だと思われること」だとか、「◯◯ちゃんがやりたそうなこと」を提案して企画してると思ってる。
若 やりそうな需要が見えるからというか。
た そう。その機能を巫女って呼んでるんだけど、やりたいオーラが見えます、みたいな。で、実際それをやる時は、たとえばネオンの演劇公演で照明とか音響とかは、やら
ない。っていうか出来ない。人員配置やスペース、お金、スケジュールの管理みたいな
事をやる。
若 マネジメント的な所なんですね。
た そう。文句言うだけ 笑
若 演劇との出会いはいつ頃なんですか?
た 大学3年生の時ってことにしておくか・・・。演劇サークルの人から誘われるように、目につくように行動していて、見事、誘われた。天使の像の役。
若 それまで観た事とかあったんですか?
た あったよ。その演劇サークルの公演を何回か観た。あと小、中、高の演劇部の公演とかね。小学校の時からやりたかったんだけど、自分からやりたいって言うのが恥ずかしくって。お姫様やりたかったんだよねー。
若 ・・・・・。
た 実は小学校4年生のとき、期待して演劇クラブに入って、台詞のほとんど無い小坊主の役で。その他大勢みたいな。しかもハゲヅラで。で、同級生のコが主役で。なんであの子が主役なんだ、あたしの方がいいじゃん、って。まあ、主役もハゲヅラで小坊主なんだけど・・。で、実際はたった一言言うだけなのにガチガチに緊張しちゃって。やりたい事とやれる事が一致しないんだよね。でもまた、「わたしならもっとうまくやれるのに」って思って、また打ち消されて、ってことを大学まで何回か繰り返して。天使の像なんてほとんど動かないししゃべらないのに、頭に血が上ってかーってなって、ほとんど意識がない 笑
若 じゃあずっと燻ってたんですね。その後、なぜ演劇をプロデュースする事になったんですか?
た ペーターゲスナー演出の「山姥」に俳優として参加してから。それまで、感情がどうこうって演出しかされたことが無くて、違和感があった。身近で観た作品も、そういうふうに作られてる感じだったから、「はずかしいーっ」とか「ダサいっ」とか思ってて。で、彼の演出を体験して、演劇ってすごい可能性がある、ほんとはやっぱりかっこいいんだって思った。このときもその他大勢の村娘で 笑 しかもしゃべれない娘の役で、出番なんかほとんどないから稽古も少ないのに、演出見たさに毎日稽古場に通ってた。舞台上の俳優周辺の環境や状況を変えることで、俳優の体が変わって、台詞も変わる。
若 ムラタさんにも同じような話を聞きました。合理的ですよね。
た そうなのよ!「もっと泣いて!自分を解放して!それで泣いてるって言えるの?!」とか言われてもね・・・。表現の仕方も新鮮で、山姥の娘に都から来たサムライの全身のにおいを嗅がせたり、数人の村人たちに6mもある竹を片手で持たせてしゃべらせたり。サムライの上半身にスーツを着せて、日本で言うサムライってサラリーマンでしょ?って。
若 なるほど 笑
た で、その後プロデュースし始めた。待っててもお姫様はやらせてもらえない、やりたければ自分が主役の公演をやればいい、って。それで自分がお姫様になれる(はずの)「毛皮のマリー」をプロデュースしました。ネオンホール10周年公演として。ネオンは1994から運営に参加してたけど、バーと平日企画がほとんどで、こんな大きい企画をしたのもはじめてだった。で、演出を中沢清さん(ルーズベルト役)にお願いして美少女の役を私がやりますって言ったら、「ちょっとちがうんだよねー、美少女っていうのは少年をだますんだからさ、むしろたまちゃんは少年でしょ」って言われて。がっかりしました。でも結局少年をやって。でも、「毛皮のマリー」の主役は少年だって教えてくれた人がいて。わたし、そういうこと、ぜんぜんわかんないの。そういう自分にもがっかりします 笑
若 まだお姫様願望はありますか?
た さすがに無くなってるよ!いい加減。・・・まあ、たぶん。
若 プロデュースする事の楽しさって何ですか?
た 例えばさ、去年の夏に若さまが出てくれたハムレットでさ、若者が楽しそうにやっていたじゃん?そういうのを見ると慰められるんだよね。私みたいな仕事をやってると、自分で自分を認めるしか無いんだよね。社会的な地位なんて無いし。だから若い人が生き生きしている場を作れたっていうことがすごくうれしい。許されたっていうか、「あー、やってる事は間違ってなかったな」って思えるんだよね。それがあるからやってるというか。
若 今回の稽古とかはどうですか?
た 毎回、役者やるたびに後悔するんだよね。出来ない事が多くて。演劇のプロデュースは自分の思考回路というか興味の方向というかと一致してて、普段考えていることややっていることと地つづきで、あまり無理がない。ほっておいても考えちゃうし。それは演劇(のプロデュース)でないにしてもそうなんだけど。役者ってなると全然違って、すごいわざわざやんなくちゃならないことが多くて。まあ、身体には興味はあるんだけど、台詞覚えるとか、単純に大変で。
若 でもやってますよね 笑
た 役者の側から、制作サイドに、色々働きかけられる所とか、自分が出来る事もあるかなっと思って。あとついつい魔が差しちゃうのかな・・・役者への思いが成仏してない・・とか・・?
若 今後の野望とかありますか?
た 蔵春閣でレジデンスやりたい。滞在施設を運営することで、演劇とかやれる環境を良くしたい。あとネオンでやる時、もう少しシステマティックにやりたい。モノを動かしたり座席組んだり楽屋作ったり、暗転したり。作品作りの前の段階のことがありすぎて、大変。今回、少し改善したけど。
若 確かに。もうちょっと小回りの効くようにしたいですね。音響周りとか。
た でしょー。
若 では最後に、僕に何か希望になるような一言を。
た とりあえず5年は演劇を続けな。そうすると10年続けられるから。
若 逃がさない気だ 笑
た 5年続ければ、ちょっとは演劇の事が分かるというか、言語化出来るから。まあ何
でもそうだけど。それに演劇って共同作業じゃん。要素も多いから関われる人間も多い
。ある意味人生の縮図っていうか。社会性の乏しい人でも、演劇やると、最後の所で踏
ん張れるようになる、と思ってる。
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インタビュー・編集 若林優也