「ハムレット?」リレーインタビュー② -稲田英資さん-
第2回目は、ネオンブログに寄稿してくれている稲田さん。
3月のプロデュース公演がきっかけで、初めて台本を書き、その作品先日のネオンホール短編劇場で上演されました。
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哲:いつも、お世話になってます! なんか稲田さん3月の『マッチ〜』が終わってからいきなり台本書き始めたり、急に演劇づいたな! って、驚き半分嬉しさ半分感じてるんですが、演劇のどんなとこにひかれたんですか? っていうか演劇にひかれてるんですかね?
稲田さんのなかで何が起きてるのか、興味深いです。
稲:うん。ぼくもちょっと驚いています。哲郎さんほどじゃないけど。笑
台本を書き始めたきっかけはマッチですね。確かに。自分でもすごくよく覚えているのは、マッチが終わったすぐ後にゆかりさんが走ってやってきて「稲田さん、(この劇について)教えて!」って言われて。
マッチは観終わった後にもやもやする劇で、自分でもそれは分かっていたので、もやもやを抱えて帰ろうと思っていたのだけど、ゆかりさんにそれを言われた瞬間に頭の中で「この劇をどう説明するか」みたいなスイッチが入って。 それまで邪宗門以外に演劇を観たこともないし、自分にとって演劇は「通り過ぎるもの」だったのが、そのスイッチでいったん自分の中に入れてアウトプットするものになったっていう感じはすごくよく覚えています。
それでゆかりさんにマッチの感想みたいなレポートを送ったのですが、それだと何というか、自分の中にあるモヤモヤがあまり減らなかったんですね。それよりは「アウトプットする」という経路ができちゃったので、これは出さないとしょうがないぞみたいな感じが残って。それで台本を書き始めたっていうのが自分としてはあります。
でも、アウトプットって「こういうのがいい!」っていうイメージがないと難しいんですよね。それで試行錯誤していて。そんなときに夏海さんに『わが星』のDVDを貸してもらって、それがすごくよくて。こういうの書きたい!って思って。それで開き直って書いたのが『ほしのかけら』でした。マッチから短編までの経路を大雑把にいうとこんな流れで。
だから、哲郎さんの「っていうか演劇にひかれてるんですかね?」っていう質問はけっこう難しくて、「やってみたら、あっという間に数か月たって、演劇にひかれているかどうかっていう自覚すら自分にも分からない」っていう感じです。なんだそれ。笑
でも、八月に上演される『わたしの星』も予約したし(楽しみです)、さっきまで『桜の園』と『三人姉妹』を読んだりしてて(かもめの方が面白いなーと思ったり)、「演劇を面白がろうとしている自分」や「演劇から何かもっと出せるんじゃないかと思っている自分」はすごく感じています。
あと、もちろん、(ネオンホール短編劇場の)丘ペンギン競技会で上演してもらえたことはすごく嬉しかったり、励みになっていて。 でも、それはどちらかというと台本を書き始めたきっかけというよりは、(恥ずかしいけど大きな声で言えば)「次もやりたい!」っていう気持ちに結びついています。
自分の書いたものが自由に解釈されて一つの世界になっていく過程や、演出家や役者さんたちの手によって上演される劇作品そのものがぼくにとってすごく面白くて。その感覚が新鮮でわくわくしました。だから、今は「またやってもらいたい!」とも思うし、「やってもらうに足るものを書きたい」って思っています。
哲:うーん、面白いです。 なんか誰かが演劇を始めるのに年齢は関係ないって言ってた気がするけど、それを目の当たりにしている感じがします。 結構、ピュアですよね。初期衝動のようなものを感じます。 四十の手習いじゃないですが、稲田さんが台本書いてもってくる様子をみて、なんかいいなぁって思います。
単純にうれしいですよね。 なんだろう、こう、挑戦してくれる感じとか。 作品でより稲田さんのことが知れたり。
というか、はまりはじめていますよね。 あと、演劇の入り口が“書く”っていうのも、 あんまり自分の周りにはなかったケースだと思う。 やっぱり圧倒的に出るケースが多いと思うので。
稲:ピュアですかね…。うーん、自分じゃよく分からないですが、これについてはやりたい気持ちとかを誤魔化さないでやろうって思っています。その辺、ぼくは苦手だったのですが、やっぱりちゃんとやろうって。
あー、そうですね。ぼくは「書く」という入口でしたね。それは間違いないです。 ぼくは「考える」と「書く」がほぼイコールで、ゆかりさんがきっかけで「考える」ために「書く」ことが始まったのですが、レポートを書いただけではマッチのもやもやは全然解消されなくて。そういう意味ではマッチの存在は大きかったです。どんだけもやもやが大きいんだという。笑
うん。はまりはじめてますね。いまはいろんな戯曲を読むのがすごく面白いです。シェイクスピアは初めてでしたが、ハムレットも面白かったです。
哲:おー! どんなところがおもしろかったですか? 因みに、それは翻訳はだれですか?
稲:えーと、翻訳はベーシックに福田恒存さんです。新潮文庫の。
シェイクスピアは今回初めて読んだのですが、台詞は修飾が多いのに(というか九割修飾ですよね)テンポが流れるようによくて、読んでいて気持ちよかったです。よく知らないけど歌舞伎のようにいったんその様式やリズムに入ってしまえれば後は気持ちよさに浸っていられるみたいな。
だから、第一幕第一場を読みきってしまえば後は本当にするするーっと読めて、物語として単純に面白いと思いました。物語を前に進ませる力がすごく強くて、なるほどエンターテイメントだなーって。
「ハムレット=生きるべきか、死ぬべきか。それが問題だ」しか知らなかったぼくが初めて読んでまず思ったのは、ハムレットは狂騒のなかに自分を置く、もしくは狂騒の火を焚き続ける若者なんだということでした。
ハムレットがというよりも、シェイクスピアがこの作品についてそう仕向けたと言ってもいいのかもしれないけれど。それは意外なほどそうで。
父の敵討ちも、「生か、死か、それが疑問だ」も、オフィーリアの死も、最後の試合すらも狂騒という花火の焚付に過ぎなくて。物語の軸のはずだった父王の敵討ちなんて終盤は薄れてしまうくらいで。
悩みも、怒りも、恋も、憤りも、焦燥感も、感情のすべてが狂騒のなかにある「状況」そのものが青年期だとすれば、これは確かに若者を描いた物語だと思いました。
だから出演者全員を二十五歳以下に限定した今回のやり方は面白いなーと思うし、「どんな演劇になるんだろう?」と今からとても楽しみにしています。
哲:狂騒、若者、、うーんなるほど、なんだかとってもすっきりしました。
ありがとうございます。
本番まで頑張ります。 ご期待下さい!
稲:うん。とても楽しみにしています。
二十三日に『わたしの星』を観に行って、二十四日に『ハムレット?』を観る予定です。楽しみ。しかし、こんなスケジュール、半年前のぼくからはとても考えられないよ。笑
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ネオンホールプロデュース 演劇公演2014 vol.2
「ハムレット?」
原作:シェイクスピア
翻案/構成/演出:西村和宏
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25歳以下の長野の若者と香川県四国学院大学の演劇コースの学生16人が
真夏のネオンホールで古典の代名詞「ハムレット」に挑みます。
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