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来年1月のネオンホールプロデュース公演で演出をするのは、「アートひかり」主宰の仲田さんです。
“演出”をテーマにお話をうかがいました。
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哲:仲田さん、いきなりですが、演劇の演出に興味をもったり、やり始めたきっかけについて教えてもらえますか?
仲:高校の時に演劇部で、作・演出を行ったのが、きっかけですかね。
役者志望で演劇をはじめたけど、声が小さくて、それがコンプレックスで、それでもなんとかならないかと声以外の色んなアイデアを遂行しているうちに、逆転の発想=演出的目線が身に付いていったような、そんな流れな気がします。
哲:逆転の発想が、仲田さんにとって一つの演出の着想なんですね。
なんか、演劇って役者論とか役者ありきみたいなところからはじまる雰囲気ありますよね。
自分は最近やっと、「演劇が作品になるためには、演出が大事」っていうことを体験し始めた感じなんですが、仲田さんにとって演出ってどういう作業ですか?
仲:そうですね~~自分における演出の作業としては、物事をフェアにしていく作業、かな、と思います。偏らせないというか。です。
哲:偏らせない、なるほど。。
仲田さんの作品を観ていると少し意外な言葉に感じますね。
それは具体的にはなにをどうしていく事なんでしょう?
仲:単純なことで言えば、衣装でも演技でも、美術でもなんでも、これは恥ずかしいな、とか、狭いな、ということをなくしていくことです。
作品を観てほしい観客が、老若男女だったり、日本各地だったり、世界各国の人々なので、そこに納得してもらえる、通用する強度のあるものを目指しています。恥ずかしいとか狭いの基準はそこで決めています。
哲:地域や世代がちがうと文化的な価値観って変わりますね!
そういう価値観の違いに絶えるものっていうのは、「普遍性」ということなんでしょうか?
仲:そうですね、人間にとっての普遍性ってことだと思います。
哲:腑に落ちます。
もし仲田さんが、シェイクスピアを演出するとしたら、どんな感じになるんでしょうね。
とても興味があります!
仲田さんが思う、ハムレットや、シェイクスピアの面白さって何ですか?
仲:昔はそういうもんかあ、と思ってましたが、広く上演されている中で、色んな人の独特な解釈や手法や熱意がそれぞれだったりするのを観るうちに、そのことが面白いなと思うようになりました。
きっと、ハムレットに限らず、シェイクスピア作品が、現在も色んな形で上演され続けている理由や魅力が、何かあるからだと思いますが、不勉強で、まだその面白さを語れるに至らずで。
シェイクスピア作品は、貴族達にとっての、ゴシップ紙だったり、昼メロみたいなもんだったんじゃないかなと個人的には思ってるんですが、とにかく有名なのはすごいと思います。
高校時代に演劇部をはじめた頃、何の部活に入ったのか聞かれ、「演劇部に入った」と告げると、身内親戚誰でももれなく「ああ、ロミオとジュリエットの。」と言いました。
静岡の片田舎だったんですが、みーーんなそれしか知らないくらいにシェイクスピアは知っていて、ものすごく「象徴」。演劇界で同じように浸透しているギリシア悲劇や聖書に比べても、感情的で、劇的で、とっつきやすいんですかね。
今回のハムレット?の試みも、自由度が高そうでどうなるのかとてもミステリアスです。きっと刺激的な作品なんだろうなと妄想します。
哲:「象徴」!
そうですね!とてもしっくり来ます。
自由度、高いと思います。
自分は演劇未経験の人が、舞台の上で素直な感じで、というかこう観てて恥ずかしくなく
いきいきしていると、とても嬉しいです。
いい作品になるよう、残りわずかですが、頑張ります!
仲田さんには、また9月の「ちんどんワークショップ」、来年1月のネオンのプロデュース公演とお世話になります、いまからとっても楽しみです!
どうぞよろしくお願いします!
仲:こちらこそ、がんばります!
ありがとうございました。
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ネオンホールプロデュース 演劇公演2014 vol.2
「ハムレット?」
原作:シェイクスピア
翻案/構成/演出:西村和宏
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25歳以下の長野の若者と香川県四国学院大学の演劇コースの学生16人が
真夏のネオンホールで古典の代名詞「ハムレット」に挑みます。
詳細はこちら→●
ご予約受付中です!
ネオンホールのかなり近くにあるギャラリー「ガレリア表参道」の運営もされている石川さん。文化についてのお話がとっても面白くていつもとっても勉強になります。
演劇の文化としての側面について、お話して頂きました!
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哲:石川さんこんにちは、 インタビューうけてくださってありがとうございます!
石川さんにお話を聞けるととっても勉強になります。
ギャラリーのオーナーもされるし、唐組を呼んだりもしちゃう、石川さんの趣向がとっても興味深く思っています。
文化という言葉の中にはどちらもしっかりおさまると思います。
文化として演劇を考えた時に、その一番の価値ってどういう部分なんでしょうか、?
何かいきなり大きめな質問ですいません。 イメージすることありますか?
石:すごい大きな質問で原稿用紙50枚ぐらいが必要な感じです!?
私自身の演劇への入り口は近世芸能の歌舞伎からです。
初めて歌舞伎を見た18歳の時、この不思議な世界に魅せられました。
男が女に、老人が美女に若者に、世界を反転させるための役者のエネルギーは半端ではありませんでした。
乞食が王になる世界です。
それから約半世紀近く歌舞伎、能、文楽、そして当時アングラといわれた状況劇場などの芝居、舞踏・・新劇、新派まで見てきました。
江戸時代は千両を取る人気役者も、芝居町を出るときには編み笠で顔を隠し、建前としては、自由に芝居町から出られない、士農工商の外側にいる存在でした。
「錦着た畳の上の乞食かな 二代目団十郎」
日本の芸能には権力から一番遠い境界線から、中心を撃つという構造があると思います。
私はその屈折したエネルギーに魅せられました。
本当に芝居に入り込んだ時には、この幕が下りた後に生きていたくないと思いました。
そういうパッションを燃え立たせる狂気も演劇のある一面です。
もっと論理性のある芝居の構造、演出の力に魅せられるときもあります。
全く違う解釈による世界が、同じ戯曲で展開するのですから。
文化をどう規定するかはまた大きな問題ですが、人間が太古からの生活を見ますと、日々の食べ物を得るだけでも大変な時代も、洞窟には絵をかき、衣服デザインや装飾もそれぞれの環境の中でしています。
死者に対する儀式、狩猟にしても農耕にしても自然の畏怖との闘いであった頃、いろいろな儀式に伴う、演劇的なかたちが世界中にあります。
音楽や舞踏も日常の労働や儀式から立ち上がってきたと思います。
文化は生きていることから遊離したものではなく、生きていく力であり、日常の枠作りであり、人間は文化に触れ享受しないと生きていることを確認できないものだと思います。
文化としての演劇の一番の魅力は日常からの逸脱であり、演劇は異界の力に触れる場です。
日常とは非日常に裏打ちされないと、豊穣さを失い、エネルギーが枯渇していきます。
演劇は世界の解釈を無限に広げ、人間存在の不可思議さを多面的に見せ、心の迷宮を辿らせてくれます。
それと現代では忘れがちな人間の肉体の力、存在のパワーを実感させてくれます。
結果として、私たちの現実に生きる力を強化し、他者への理解を深めていくものだと思います。
哲:…なんだか、ものすごく感動しました。。
石川さんの半生は演劇とともにあるんですね!
これまで「演劇に可能性がある」と、演劇に関わりながら、わからないなりに模索していましたが、とても背中を押された感じがします。
「演劇は世界の解釈を無限に広げ、人間存在の不可思議さを多面的に見せ、心の迷宮を辿らせてくれます。」そんな作品づくりをしていけたら…と思います!
今回は、若者たちが「ハムレット」に挑戦しています。
ぜひ、激励の言葉を頂けませんか?
石:暑い中の制作お疲れ様です。
ご自分の自覚はないと思いますが、青春という言葉はぴったりしないけれど、エネルギーが滾っている時を過ごしていらっしゃるのだと思います。
でも若いということは、外見は美しいのですが、内面は大きな不安に引きずり回され、自分の無様にやりきれなくなる時代でもあります。
まあ、ハムレットもそういう解釈もできるのでしょう!
土曜に見に行きますね。
――日本最初の「オフェリア」
今回の西村さんの演出がどんな「ハムレット」を見せくださるのか、楽しみにしています。
これまで何万人のハムレットが世界中で演じられたことでしょう!
日本で初めて「ハムレット」のオフェリアを演じたのは、松代出身の日本最初の女優・松井須磨子です。
明治43年早稲田文芸協会の第一回試演会で「ハムレット」が上演され、23歳で文芸協会に入ったばかりの須磨子がオフェリアに抜擢されます。
坪内逍遥訳の台詞は今読むと歌舞伎のような調子ですが、大評判を呼び、翌44年には帝国劇場で須磨子たちによりで再演されます。
平塚らいてふらによる女性の雑誌「青鞜」が発刊された年でもあります。
いろいろなハムレットを見ましたが、生と死、恋、狂気、嫉妬、近親憎悪など、時代を超えた様々なモティーフが散りばめられた戯曲は、どういう風にも料理ができるからこそ、多くの演出家が挑み、俳優が演じてきたのでしょう。
スタッフ、出演者の方々、暑い中お疲れ様です!
土曜は楽しみにしています。
哲:石川さんのコメントにとっても元気を頂いています。
そして、すごく勉強になります…!
シェイクスピアが生誕450年で、
100年前に日本で初めて上演されて。
なんかとても壮大です。
また、それだけじゃなくても、貴重な体験だと、実感しています。
残りわずか、頑張りたいと思います。
ありがとうございました。
本番、お会いできるのを楽しみにしています!
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ネオンホールプロデュース 演劇公演2014 vol.2
「ハムレット?」
原作:シェイクスピア
翻案/構成/演出:西村和宏
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25歳以下の長野の若者と香川県四国学院大学の演劇コースの学生16人が
真夏のネオンホールで古典の代名詞「ハムレット」に挑みます。
詳細はこちら→●
ご予約受付中です!
松本には、劇団主導の演劇祭や演劇連合会があったりして、演劇のシーンといえるよう動きや横のつながりを感じます。
演劇連合会の会長さん、永高さんにお話をお聞きしました!
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哲:演劇連合って、(いつごろ)どんなきっかけでうまれたんですか? 長野っていうかネオンホールの周辺には、そういう組織立った感じの横のつながりってなくて。。
永:まつもと演劇連合会の歴史は結構古くて、昭和62年に始まった「松本現代演劇フェスティバル」の地元劇団協力組織として原型ができたんです。それで、この演劇フェスティバルが、全9回で終了してしまった。そこで、その後、演劇祭を実施する主催組織として「松本アマチュア劇団連合会」が発足しました。その後「まつもと劇団連合会」と名称を変え、現在に至っているというわけです。もちろん今でも「まつもと演劇祭」の主催団体です。また演劇活動への理解と普及を目的とした「ぴかぴか芝居塾」も主催して、今年で12期となりました。
哲:かなり歴史がありますね…! 松本市の、演劇の歴史を反映しているんですね。
「ぴかぴか芝居塾」は具体的には、どんなことをされてるんですか?
永:ぴかぴか芝居塾はですねえ、今から12年前に始まったんですが、その原因となることが起きたんですよ。 それは、劇団数の減少です。兎角劇団と言うのは、ある一定の年数続くと劇団員が櫛の歯が欠けるようにいなくなるんです。ことに女優さんは、結婚、出産なんかで10年はしばいどころじゃなくなる。で、松本周辺の劇団もご多分にもれずで、あっと言う間に劇団関係者が減ってしまった。そこで、なんとか掘り起こしを行うべく、市民に向けてワークショップ形式で演劇に目を向けてもらえるように、手弁当で始めたんです。これがはじまり。今では、ぴかぴか出身者の方が多い位になってきました。 内容は徹底していて、とにかく「楽しんでもらう」事が全て。ゲームやミニ脚本やらを6日間やって、最終日は、照明や音響もセットしての発表会で終わる。今では、俳優コースとして、さらに1ヶ月の追加コースも作り、より深く体験してもらえるようにしています。
哲:なるほど、 劇団に入ることが演劇の入り口だとしたら、だんだん、難しくなってきているかもしれませんね。きっと時代も関係しているんだと思います、、
間口を広げなきゃ、というのは、ネオンホールを運営していてよく思います。
じつは、ナノグラフィカのたまさんが始めた、この西村さんを招いての創作演劇の企画、今回で9回目になるんですが、結果的にネオンホールにとって間口をすごく広げているんです。なかなか知り合えなかっただろうな、という人と知り合えて、しかも一緒に演劇を創るという経験はとても尊く感じてます。
ただ企画を続けていく上では、同じことをやっても先細ってしまうので…というようなこともあり、今回は年齢制限を求めて若ものがハムレットに挑んでいます。
永高さんは、これまでの演劇経験の中で、 シェイクスピアをやったことはありますか?
永:演劇を始めて極初期に練習としてやったことはありますね。あと「ヘンリー5世」とかの長ゼリフをやったりとかです。 古典を現代的にやることの面白さは、わかりますね。いつかチャレンジしてみたい。
哲:シェイクスピアの長ゼリフ! とっても魅力的ですよね…!
この「ハムレット?」を観て受けとる印象が現代的かどうか、自分にはわからないというか観た人にゆだねたいと思ってたりもしますですが、 西村さんの稽古をみてて、芝居を作っていく方法っていろいろあるんだなと、勉強させてもらってます。 とにかく若者のエネルギーというか、「若さ」の魅力に沢山触れている気がしています。
大変なことも多いですが、イイ経験というか、楽しい体験を重ねていきたいですね!
ありがとうございます、 良かったら、最後に何か一言頂けますか?
永:僕は、地方の演劇事情は岐路にあると思ってます。おおきく分けると二方向。盛大な市民参加型と極小規模なマニアック型。どっちがどうってわけではないけど地域の演劇が中央に対して、今までの模倣やら、憧れから脱していく必要を感じます。プラスご当地芝居ではなく、そこでやってる意味が欲しい。 デジタル時代だからこそ、アナログ文化の極北とも言える演劇が再注目される時代がすぐそこにきてると思ってます。
哲:なるほど、、 そうですね、模索しがいもありますよね。 個人的には、マニアックだけど開けていく、そんな感じに憧れます!
どうもありがとうございます! これからも、よろしくお願いします。
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ネオンホールプロデュース 演劇公演2014 vol.2
「ハムレット?」
原作:シェイクスピア
翻案/構成/演出:西村和宏
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25歳以下の長野の若者と香川県四国学院大学の演劇コースの学生16人が
真夏のネオンホールで古典の代名詞「ハムレット」に挑みます。
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第2回目は、ネオンブログに寄稿してくれている稲田さん。
3月のプロデュース公演がきっかけで、初めて台本を書き、その作品先日のネオンホール短編劇場で上演されました。
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哲:いつも、お世話になってます! なんか稲田さん3月の『マッチ〜』が終わってからいきなり台本書き始めたり、急に演劇づいたな! って、驚き半分嬉しさ半分感じてるんですが、演劇のどんなとこにひかれたんですか? っていうか演劇にひかれてるんですかね?
稲田さんのなかで何が起きてるのか、興味深いです。
稲:うん。ぼくもちょっと驚いています。哲郎さんほどじゃないけど。笑
台本を書き始めたきっかけはマッチですね。確かに。自分でもすごくよく覚えているのは、マッチが終わったすぐ後にゆかりさんが走ってやってきて「稲田さん、(この劇について)教えて!」って言われて。
マッチは観終わった後にもやもやする劇で、自分でもそれは分かっていたので、もやもやを抱えて帰ろうと思っていたのだけど、ゆかりさんにそれを言われた瞬間に頭の中で「この劇をどう説明するか」みたいなスイッチが入って。 それまで邪宗門以外に演劇を観たこともないし、自分にとって演劇は「通り過ぎるもの」だったのが、そのスイッチでいったん自分の中に入れてアウトプットするものになったっていう感じはすごくよく覚えています。
それでゆかりさんにマッチの感想みたいなレポートを送ったのですが、それだと何というか、自分の中にあるモヤモヤがあまり減らなかったんですね。それよりは「アウトプットする」という経路ができちゃったので、これは出さないとしょうがないぞみたいな感じが残って。それで台本を書き始めたっていうのが自分としてはあります。
でも、アウトプットって「こういうのがいい!」っていうイメージがないと難しいんですよね。それで試行錯誤していて。そんなときに夏海さんに『わが星』のDVDを貸してもらって、それがすごくよくて。こういうの書きたい!って思って。それで開き直って書いたのが『ほしのかけら』でした。マッチから短編までの経路を大雑把にいうとこんな流れで。
だから、哲郎さんの「っていうか演劇にひかれてるんですかね?」っていう質問はけっこう難しくて、「やってみたら、あっという間に数か月たって、演劇にひかれているかどうかっていう自覚すら自分にも分からない」っていう感じです。なんだそれ。笑
でも、八月に上演される『わたしの星』も予約したし(楽しみです)、さっきまで『桜の園』と『三人姉妹』を読んだりしてて(かもめの方が面白いなーと思ったり)、「演劇を面白がろうとしている自分」や「演劇から何かもっと出せるんじゃないかと思っている自分」はすごく感じています。
あと、もちろん、(ネオンホール短編劇場の)丘ペンギン競技会で上演してもらえたことはすごく嬉しかったり、励みになっていて。 でも、それはどちらかというと台本を書き始めたきっかけというよりは、(恥ずかしいけど大きな声で言えば)「次もやりたい!」っていう気持ちに結びついています。
自分の書いたものが自由に解釈されて一つの世界になっていく過程や、演出家や役者さんたちの手によって上演される劇作品そのものがぼくにとってすごく面白くて。その感覚が新鮮でわくわくしました。だから、今は「またやってもらいたい!」とも思うし、「やってもらうに足るものを書きたい」って思っています。
哲:うーん、面白いです。 なんか誰かが演劇を始めるのに年齢は関係ないって言ってた気がするけど、それを目の当たりにしている感じがします。 結構、ピュアですよね。初期衝動のようなものを感じます。 四十の手習いじゃないですが、稲田さんが台本書いてもってくる様子をみて、なんかいいなぁって思います。
単純にうれしいですよね。 なんだろう、こう、挑戦してくれる感じとか。 作品でより稲田さんのことが知れたり。
というか、はまりはじめていますよね。 あと、演劇の入り口が“書く”っていうのも、 あんまり自分の周りにはなかったケースだと思う。 やっぱり圧倒的に出るケースが多いと思うので。
稲:ピュアですかね…。うーん、自分じゃよく分からないですが、これについてはやりたい気持ちとかを誤魔化さないでやろうって思っています。その辺、ぼくは苦手だったのですが、やっぱりちゃんとやろうって。
あー、そうですね。ぼくは「書く」という入口でしたね。それは間違いないです。 ぼくは「考える」と「書く」がほぼイコールで、ゆかりさんがきっかけで「考える」ために「書く」ことが始まったのですが、レポートを書いただけではマッチのもやもやは全然解消されなくて。そういう意味ではマッチの存在は大きかったです。どんだけもやもやが大きいんだという。笑
うん。はまりはじめてますね。いまはいろんな戯曲を読むのがすごく面白いです。シェイクスピアは初めてでしたが、ハムレットも面白かったです。
哲:おー! どんなところがおもしろかったですか? 因みに、それは翻訳はだれですか?
稲:えーと、翻訳はベーシックに福田恒存さんです。新潮文庫の。
シェイクスピアは今回初めて読んだのですが、台詞は修飾が多いのに(というか九割修飾ですよね)テンポが流れるようによくて、読んでいて気持ちよかったです。よく知らないけど歌舞伎のようにいったんその様式やリズムに入ってしまえれば後は気持ちよさに浸っていられるみたいな。
だから、第一幕第一場を読みきってしまえば後は本当にするするーっと読めて、物語として単純に面白いと思いました。物語を前に進ませる力がすごく強くて、なるほどエンターテイメントだなーって。
「ハムレット=生きるべきか、死ぬべきか。それが問題だ」しか知らなかったぼくが初めて読んでまず思ったのは、ハムレットは狂騒のなかに自分を置く、もしくは狂騒の火を焚き続ける若者なんだということでした。
ハムレットがというよりも、シェイクスピアがこの作品についてそう仕向けたと言ってもいいのかもしれないけれど。それは意外なほどそうで。
父の敵討ちも、「生か、死か、それが疑問だ」も、オフィーリアの死も、最後の試合すらも狂騒という花火の焚付に過ぎなくて。物語の軸のはずだった父王の敵討ちなんて終盤は薄れてしまうくらいで。
悩みも、怒りも、恋も、憤りも、焦燥感も、感情のすべてが狂騒のなかにある「状況」そのものが青年期だとすれば、これは確かに若者を描いた物語だと思いました。
だから出演者全員を二十五歳以下に限定した今回のやり方は面白いなーと思うし、「どんな演劇になるんだろう?」と今からとても楽しみにしています。
哲:狂騒、若者、、うーんなるほど、なんだかとってもすっきりしました。
ありがとうございます。
本番まで頑張ります。 ご期待下さい!
稲:うん。とても楽しみにしています。
二十三日に『わたしの星』を観に行って、二十四日に『ハムレット?』を観る予定です。楽しみ。しかし、こんなスケジュール、半年前のぼくからはとても考えられないよ。笑
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ネオンホールプロデュース 演劇公演2014 vol.2
「ハムレット?」
原作:シェイクスピア
翻案/構成/演出:西村和宏
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25歳以下の長野の若者と香川県四国学院大学の演劇コースの学生16人が
真夏のネオンホールで古典の代名詞「ハムレット」に挑みます。
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いよいよ明日から稽古が始まる、プロデュース公演「ハムレット?」!!
公演日までの間、いろんな人に演劇や、ネオンや、ハムレットなんかについて、
インタビューしていこうという企画です。
第一回目は、今作の演出家・西村さんに、いくつか質問してみました。
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哲:西村さん、お疲れさまです、間もなく稽古が始まりますね。。
ドキドキします。準備ひきつづき頑張ります!
前回の公演をネオンホールでやったことで、今回も実現できる部分も大きいかと、勝手に思ってるんですが、3月の公演、やってみてどうでしたか?
ネオンホールって劇場としてどうなのかなって、あんまり他と比べられなく、わからないんですが。。
西:長野での創作はこれで9作目となりますが、ネオンホールで創ったのは前回が初めてでした。
まずは思ったのはスタッフの受け入れの心地よさですね。
アーティストと作品を一緒に創る、という姿勢が染み付いているな、と感じました。
あとは、空間として心地よいと思います。
まぁ、もちろん、柱があったり、使える機材も少なかったりして、なんだかんだと不都合なことも多いですが、”気”の流れのよさがいいなと感じました。
それは20年、音楽や演劇をやり続けてきた、この場所を愛している人がいる、そういうことに関係していると思います。
哲:…とても嬉しいです!!
『アーティストと作品を一緒に創る』
部分は、感じ取ってもらえたらとっても嬉しいです。
日々、結構そのことについて考えています。
バンドにしろ、演劇にしろ、やってくれる人がいて、でもみてて惜しいなと思う部分が正直あったりして、それについて話をしてみたり、またステージの外側にいる自分たちに出来ることで、より面白くなることってあるだろうなって。。
マッチ(3月の公演)のときは、役者は、役者に、演出家は演出家に専念して欲しい。そんな思いが強かったです。
“気”の流れは、3月の公演があって、さらに良くなったと感じています。
もっと良くしていきたい。
ハムレットは、既に香川で学生の皆さんと創った作品ですよね?
どうして、ハムレットをやろうと思ったんですか?
何となく自分たちにとって、シェークスピアってなんか大変そう、っていうイメージがあったりします。「シェークスピアかぁ…」みたいな。
西:今回の作品は2部構成になっています。
1部が2012年冬に学生たちと創った「たぶん、ハムレット」という作品を元に創ります。
これは、授業の発表会のときに創ったので、
演劇をまったく観たことがなく、興味もない、シェイクスピアってなに?みたいな学生が観にきて、
「へー、意外とシェイクスピア面白いじゃん」
みたいな感じで観れることを目指して創った作品です。
ハムレットを45分くらいにコンパクトにめとめて、学芸会風で脱力系です。
2部は「Hamlet/Body」という新作です。
ハイナー・ミュラーの「ハムレットマシーン」という、1977年にハムレットを解体し、当時の東ドイツの社会の様子を描いたテキストがあるのですが、それにインスパイアされた言葉の羅列と、出演する若者の今の悩みを羅列して、
現代の日本の社会をどうにか表現できないか?と考えています。
まぁ、こちらはどうなるか、稽古が始まってみないと分かりません。
稽古しながら、今の仮説がただしいかどうか、試したいと思っています。
で、なぜ、「ハムレット」かということですが、
それはやっぱり、日本がこういう時代になっちゃったから、というのが大きいと思います。
秘密保護法、集団的自衛権、憲法解釈
ほんの少し前なら、信じられないようなことが今、起こっていて、
そういう混乱の時代においては、やっぱり「ハムレット」だな、と。
私は「ハムレット」は
混乱の時代に、混乱のまま、ひとりの若者が悩み続ける話だと思っていて
だから、その部分を上手く舞台にあげることができれば、
観る人がいろいろ考えられる作品になるんじゃないかな、
そういう作品を創りたいな、
と思っています。
『シェークスピアってなんか大変そう、っていうイメージがあったりします。』
あと、そういう人たちに、演劇ってなんでもいんだ、みたいなことを思ってもらえたらと思って、今回は古典をやろうかと。それにちょうど今年はシェイクスピア生誕450周年ですし。
哲:なるほどです。。
若者の悩みは時代や社会を反映しているのかな、という気はします。
最近だと、どんな仕事をしようかとか、どこに就職しようかとか。
…若いって、イコール悩むことだったりするんですかね。
なんだかこのごろ20代の人たちと話をしていると、数年前の自分のことがよくフラッシュバックします。
今回年齢制限を設けて、若者と創るというのも初めての試みなので、楽しみですね。
(怖さもありますが、、笑)
西村さんは、普段学生たちをみていて、どんなことを思うんですか?
西:単純に羨ましいなー、と思います。
まだ、これからの人生がまったく決まってなくて、どうとでもなる、というのはいいなーと。
本人たちにとっては不安と悩みだらけだとは思うんですが。
彼らのころに想い描いていた将来って、40歳頃のことだと思うんですね、最近。
だから、彼らにとって(もしくは20歳のときの私にとって)、今の私は「将来なう」なんですよ。
もちろん、私だってこれからの目標もあるし、やりたいこともある。
でも、それは、いろんな選択肢がもう狭まれた中での目標でしかない。
しかも、年齢をかさねて背負うものもできて、自分のためだけに生きる、ということはできない。
彼らは、それができる。
そういうのが羨ましいな、と。
まぁ、とは言っても、その頃に戻りたいか?って聞かれたら絶対嫌ですけど。
今回来る学生は2年生~4年生までばらばらなんですが、
特に3、4年生はこの四国学院大学演劇コースの立ち上げメンバーなので、
私自身、すごく思い入れが強いです。
大学としても初めての試みで、私も大学の教員をやるのも初めてで、学生たちには先輩もいないし前例もなにもない、
誰もかれも右も左もわからない、という状況でこの2、3年、走ってきたので、
学生ー教員、というより、劇団創立メンバーくらいの関係性じゃないかな、と思います。
去年、私の作品にレギュラーででている学生は12から13本くらいは出演してますから、
その辺のプロよりよっぽど出てます。
しかも、そのほとんどが有料公演で、私以外のプロの演出家とも作品を創っています。
おそらく今、日本で一番演劇をやっている学生たちだと自負しています。
西村和宏
今作の演出家。サラダボール主宰・青年団演出部・四国学院大学助教。
1973年兵庫県生まれ。主宰劇団での活動の他に、地域市民や高校生向け演劇WSなどプロの俳優向けでない演劇WSを多数行い、芸術を起点とした地域のコミュニティの再編成・地域活性化を目指した活動も行っている。
長野での市民劇創作は今作で9作品目となる。
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